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【教えて!五ツ星タマリエ】 「幻の卵屋さん」がTKGで世界に伝えたい"日本の卵の価値"

鶏卵業界一年目の編集担当Mが、五ツ星タマリエ(※)のみなさんに、卵の魅力や世界を教えてもらう本コーナー。今回は日本のブランド卵の魅力を世界に発信する、日本たまごかけごはん研究所の上野貴史さんにインタビューしました。「50年後に世界中どこでも卵かけご飯が食べられる世界を作る」をミッションに掲げ、「幻の卵屋さん」の出店や「たまごかけごはん祭り」といったイベントを開催するなど、たまごブームの火付け役として期待される上野さんに、ブランドたまごの魅力や研究所の活動内容について伺いました。

※「五ツ星タマリエ」とは、卵に関する知識を正しく理解した人に与えられる卵のソムリエ資格「一ツ星・三ツ星・五ツ星」3ランクの最高位の称号です。卵のことなら何でも分かるプロ中のプロとして認められる栄光の資格です。


上野 貴史(うえの たかふみ)

イタリアン、フレンチでのシェフ経験をもとに、女子栄養大学の学生食堂で12年間勤務。皇室を招いた食イベントプロデュースをきっかけに「日本の食文化・歴史を後世に伝え、育てる」という天命を授かり、2018年に株式会社八紘を設立。以来、栄養学・食育に特化したプロの料理人・プロデューサー・講師として、料理教室や富裕層向けケータリング、講演活動、メディア出演など幅広く活躍中。

―編集部M

はじめまして! 「たまペディア」編集担当Mです。本日はよろしくお願いします。まずは上野さんの自己紹介をお願いします。

―上野さん

日本たまごかけごはん研究所の代表理事を務める上野です。研究所では、その名前の通りTKGレシピの研究やイベントの開催がメインのお仕事です。その他、株式会社八紘という会社も経営しており、そちらではケータリング事業や社員食堂のコンサルティング、企業様向けのレシピ開発などを行っています。

液体窒素を使用してシャンパンをシャーベットにしたり、透明なポテトチップスを作ったりなど、分子料理を絡めて面白さを追求した出張型ケータリングを展開していましたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、現在は日本たまごかけごはん研究所に軸足を置いて活動しています。

16種類の卵かけご飯の食べ方をイラスト化した『TKG style』。
サブカルチャーとしての面白さを付随し、バズらせる目的で作成。

―編集部M

ありがとうございます。たまごかけごはんが大好きなので、研究所の活動内容が気になります!

―上野さん

当研究所では「日本の生産物・生産者の応援」「地域創生」「たまごの生食文化の普及活動」の3つを理念として掲げています。「たまごかけごはん研究会」「たまごかけごはん祭り」などのイベントを開催することで、TKGという言葉が生まれた当時のように、たまごかけごはんブームを再燃させたい一心で活動しています。

月に一度開催する「たまごかけごはん研究会」では、毎回異なる6種類のブランドたまごでTKGを作り、一般の方と一緒にテイスティング。その味をデータ化し、生産者にフィードバックすることで、より良いたまごづくりに活かしてもらうという取り組みです。


たまごかけごはん研究会の様子

「たまごかけごはん祭り」は、たまごとトッピング商品のランキングを決める、年に一度の祭典です。この日は全国各地のブランドたまごが一堂に会し、ご飯と醤油とトッピング商品が食べ放題になります。現在は「卵フェス」という屋台村も含めた大規模催事として拡大中です。また本業のケータリングで提供していた、たまごかけごはんから着想を得て、シェアオフィスなどに出張してたまごかけごはんを提供する「出張たまごかけごはん」という取り組みも行っています。


「卵フェス」の様子。ブランドたまごで作るTKGが食べ放題。

生産者支援で始めた「幻の卵屋さん」

―編集部M

どの取り組みも魅力的で、たまごかけごはん好きにはたまりませんね! 最近力を入れている取り組みなどがあれば教えてください。

―上野さん

そうですね。「幻の卵屋さん」というポップアップストアの展開です。これは、全国各地の高級ブランドたまごを1個単位で詰め合わせ購入ができる期間限定の"幻"の卵屋です。年間約70ヶ所で展開しており、フランチャイズ展開も行っています。

―編集部M

私も駅で見たことあります! 「幻の卵屋さん」を始めた経緯について教えてください。

―上野さん

2020年に「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」に照準を合わせて、海外の方でもたまごかけごはんにチャレンジできるような実店舗をオープンする予定でしたが、新型コロナウイルスの拡大で断念せざるを得ませんでした。

同時に、全国のブランドたまごの生産者から「卸先がない」「注文が入らない」という悲鳴も聞こえてきました。その支援策として始めたのが「幻の卵屋さん」です。まずは全国の生産者から産みたてたまごを買い取って、軒先でバラ売りすることから始めました。6個入りのパックにどれでも自由に詰められて、800円で高級たまごを購入できるビジネスモデルです。


ブランド卵を1つずつ選べる「プチ贅沢」

―編集部M

コロナ禍に産まれたビジネスモデルだったんですね。お客様の反応はいかがでしたか?

―上野さん

「1個単位で購入できるので、いろんな種類のたまごを食べ比べられる」「自分で選んで詰める楽しさが味わえる」「そこまでお金をかけずに非日常のプチ贅沢を味わえる」「これまでスーパーの卵で我慢していたけど、実はこういった高級卵が食べたかった」など、たくさんのコメントが寄せられました。

現在は北海道から沖縄まで約100種類のブランドたまごを仕入れて、都心の主要ターミナル駅や百貨店、サービスエリアで販売しています。

―編集部M

ひと言で「たまご」といっても、こんなにいろんな種類のたまごがあるなんて驚きました! 味の食べ比べも楽しそうですね。

―上野さん

そうですね。たまごの味はもちろん、たまごが持つ可能性や奥深さにも気づいていただけると思います。また、お客様の多くはたまごの生食期限と賞味期限の違いを理解されていません。たまごや賞味期限に関する正しい知識を伝える場にもなっており、フードロス対策として有効です。


たまごの聖地・王子駅に出店した「幻の卵屋さん」

世界に誇れるメイドインジャパンのクオリティ

―編集部M

上野さんにお伺いしたいのですが、そもそも日本のブランドたまごが持つ魅力とはなんでしょうか。

―上野さん

日本のたまごは、世界と比べてもトップクラスの品質を誇っています。多様なたまごを作る生産者の技術、生産管理技術、物流冷蔵技術......これらは世界に誇れるメイドインジャパンのクオリティです。しかし、その事実を理解している日本人は多くありません。私自身も料理人として活動していた時に、たまごの味の違いを比べる機会がないことに気づき、食べ比べを始めたところその種類の多さと味の違いに驚いたことがきっかけでした。

日本のたまごの魅力を世界に発信するためにも、まずは日本の人たちにこの素晴らしさを知ってもらうことが大切だと考え、ブランドたまごの地位向上に重きをおいて活動しています。

―編集部M

日本のたまごは海外からも注目されているのでしょうか。

―上野さん

はい。2021年2月に松屋銀座本店の催事で出店した際には、中国のテレビ局に取り上げていただき、たまごの生食文化が特集として放送されました。2023年10月にはシンガポールで開催された、日本文化の魅力を紹介する「JAPAN Rail Fair2023」にも出店。

今後は香港、ハワイ、ニューヨークへと活動範囲を広げ、多くの方に日本のたまごが持つクオリティを実感いただけるイベントを企画していきます。


JAPAN Rail Fair出店の様子

「寿司」のように「生たまご」が世界のスタンダードになる日

―編集部M

最後に、今後の展望についてお聞かせください。

―上野さん

2019年に研究所を立ち上げ、消費者やイベント参加者の反応を肌で感じるなかで、日本のたまごが持つ可能性の大きさを実感しました。国内においては生産者・組合の連携や、海外においては輸出規制、技術の流出などの問題がありますが、たまごかけごはんが世界を席巻する日も遠くないでしょう。

当研究所としては、海外の方がたまごかけごはんにチャレンジできる環境づくりに取り組み、日本ならではのたまごの生食文化を体験いただくことで、「自分の国でも生たまごを食べたい」と思わせるムーブメントを起こしたいと考えています。

「日本のたまごを世界へ」というベクトルのもとに日本の生産者たちが手を取り合うことで、「寿司」のように「生たまご」が世界のスタンダードになる日がきっと来るはずです。「50年後に世界中どこでもたまごかけごはんが食べられる世界を作る」というミッションを実現するために、これからも日本のブランドたまごの魅力を発信し続けます。

―編集部M

本日はありがとうございました。日本ならではのたまごの生食文化が世界に広まり、いずれ日本の主要輸出品目に生たまごが並ぶ日も遠くなさそうですね!

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