地球環境にやさしい農業
CO2排出量が少ない
食料の生産、加工、流通、調理、消費、廃棄などのライフサイクル(食料システム)の中では、CO2や廃水の排出、化学農薬や化学肥料の使用、農地への転用に伴う森林開発、食品廃棄物といったさまざまな環境負荷が生じる可能性があります。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が2019年に公表した土地関係特別報告書でも、世界の食料システムにおける温室効果ガス排出量は、人為起源(人間の活動によるもの)の排出量の21~37%を占めると推定。同時に、食品ロス・食品廃棄物を削減する政策や食生活における選択に影響を与える政策が気候変動対策に役立つことも示されています。つまり、食と気候変動は密接な関係があるといってよいでしょう。
それを数値で示しているのが、「食のカーボンフットプリント」です。
食のカーボンフットプリントは、温暖化ガス排出量のひとつの指標で、平均的な日本人の食事に伴う1人当たりのカーボンフットプリントは年間1,400kgCO2e(温室効果ガスの種類別排出量合計を地球温暖化係数に基づいてCO2 量に換算した排出量)と試算されています。
下のグラフでわかるように、肉類、穀類、乳製品の順でカーボンフットプリントが高く、特に肉類は消費量が多くないにもかかわらず、カーボンフットプリントは全体の約1/4を占めるほどの高い値となっています。その理由は、肉類の場合、飼料の生産や輸送に伴うCO2排出に加え、家畜の消化器からメタン(CH4)が発生するためです。消化器からのメタン発生と聞いてもピンとこないかもしれませんが、例えば牛のげっぷにはメタンガスが含まれ、それが地球温暖化の原因のひとつとなっているのです。
農研機構 https://www.naro.go.jp/laboratory/nilgs/enteric_methane/index.html
また、肉類に次いで穀類の割合が大きいのは、日本では米の消費量が多いことが理由。水田からのCH4発生などもあり、米は他の作物と比較すると高い排出原単位となってしまうのです。
このようなことから、地球環境にやさしい農業の条件としてCO2排出量が少ないということが挙げられるでしょう。
(出典:環境省「環境・循環型社会・生物多様性白書(令和 3 年度版)」p. 81)
飼料要求率が低い
肉類の生産には飼料に関わるCO2排出が伴います。その点、少ない飼料で多くの量が生産できる養鶏は、地球環境に与えるダメージが少ないといえるでしょう。
飼料と生産量の関係を比較すると以下のようになります。
えさ10kgに対して
牛肉1kg
豚肉2㎏
たまご5kg
が生産できます。
(参考:農林水産省「知ってる?日本の食料事情 2022」p.16)
養鶏は国産国消・地産地消の農業
現在、日本の食料自給率は先進国の中で最低で、多くを輸入に頼っています。
日本の農業を守り、食料自給率を向上させるにはどうすれば良いのでしょうか?その根幹となるのは、「国産国消・地産地消」の推進です。
「国産国消」とは、自国で消費する食料は自国で生産するということ、「地産地消」とは、その土地で生産されたものをその土地で消費するということを表した言葉です。
たまごは生鮮品であることに加え、殻が割れやすく、長時間・長距離の輸送に適さないため、2023年度の自給率は97%(重量ベース)と、ほとんどが国内生産です。
また、たまごの生産者は日本全国にいて、近隣のスーパーや直売所等に出荷するため、多くは地元で消費されます。つまり、たまごは国産国消・地産地消の代表的な食品といってよいでしょう。
たまごを買うときには、賞味期限だけでなく、ラベルなどに記載された生産場所もぜひチェックしてみてください。案外近くで作られていることに改めて気づくかもしれません。
※ニワトリにはトウモロコシなどの穀類を用いた濃厚飼料を給餌するため、飼料自給率を考慮した自給率は13%と低くなります。ただし、餌のうち一定の割合を米に替えることも可能とされているので、今後は飼料用米の活用を含め、国産飼料への切り替えで自給率を高めていくことが期待されています