たまごは賞味期限が切れても食べられる!そのワケと正しい保存法・食べ方を徹底解説
うっかり賞味期限を切らしてしまったたまごを、泣く泣く処分したことありませんか? 待ってください。そのたまご、まだ食べられるかもしれません! この記事では、その理由と、正しい保存法、賞味期限切れのたまごの安全な食べ方を解説します。生ものだから心配...という人も、たまごの賞味期限の仕組みを理解すれば、きっと安心して食べられますよ。
〈目次〉
1. たまごが賞味期限切れ!いつまで食べられる?
1-1. 四半世紀前まで、たまごに賞味期限はなかった!?
1-2. たまごの賞味期限は生食を前提に設定されている
1-3. 賞味期限が切れたたまごは加熱して食べよう
2. 生たまごが長持ちする、正しい保存方法とは
2-1. 冷蔵一択!気配りプラスで保存力がさらにアップ
2-2. たまごを良い状態で保存する際のNG行動は?
3. 賞味期限が切れたたまごの安全な食べ方
3-1. 賞味期限切れのたまごはサルモネラ菌に注意
3-2. たまごのサルモネラ菌対策は加熱が簡単で確実
3-3. 賞味期限内でも気を付けたいケースは?
4. 日本は、たまごを生で食べられる希少な国
4-1. 生育から流通まで、細やかな管理で安全に届けられる
5. 日本のたまごは、賞味期限が切れても慌てないで
1.たまごが賞味期限切れ!いつまで食べられる?
冷蔵庫に保存してあった生たまご。気付いたら賞味期限を過ぎてしまっていた経験、多いと思います。でも慌てなくて大丈夫。
そもそも賞味期限とは、「おいしく食べられる期限」のことで、過ぎてしまったからと言って、すぐに食べられなくなるわけではありません。これに対して、傷みやすい食品に表示されるのが消費期限。これは「安全に食べられる期限」のことで、過ぎてしまったら食べてはいけません。
たまごに表示されているのは、賞味期限。しかもその賞味期限は、私たちの想像以上に余裕を持って設定されていること、知っていますか?
1-1. 四半世紀前まで、たまごに賞味期限はなかった!?
たまごは生鮮品。1998年以前の日本では、野菜や果物と同じように、たまごに賞味期限は設定されていませんでした。
たまごに賞味期限が設定されるようになったのは、たまごが、サルモネラ菌食中毒の原因として知られるようになったためです。
より安全にたまごを食べてもらうため、厚生労働省が基準改正に動く中、鶏卵業界でも独自に「鶏卵日付表示等検討委員会」が設置されました。この委員会で1998年6月に策定された「鶏卵の日付等表示マニュアル」に基づいて、たまごの賞味期限は記載されています。
1-2. たまごの賞味期限は生食を前提に設定されている
まず、日本のたまごの賞味期限は、生食を前提にしています。
1994年に英国のハンフリー博士が発表した理論が、賞味期限の科学的根拠になっています。
ハンフリー博士は、サルモネラ菌増殖の観点から、「たまごの保存温度と生食できる日数」の膨大なデータを集めました。
これによると、たまごは、他の生鮮食品と比べて、長く日持ちすることがわかります。これは、生の卵白に含まれる抗菌作用をもつ酵素・リゾチームが、菌の増殖を抑えているためです。
家庭で生食用として消費される日本のたまごは、このデータを基に、産卵日を起点として21日間以内を限度として表示することとされています(上図の黄色部分)。実際は、そこからさらに余裕を持って、産卵後2週間ほどを生食できる賞味期限として設定しているのです。
1-3. 賞味期限が切れたたまごは加熱して食べよう
たまごの賞味期限の設定方法を知ると、賞味期限を数日過ぎたからといって、絶対に食べられないわけではないということがわかったと思います。
賞味期限が切れたたまごも以下の条件付きで、食べられるのです。
条件1:きちんとした保存状態にあったこと
条件2:加熱すること
※見た目やにおいが変わっていたら食べられません。必ず割って確認をしてください。
それぞれについて、次から詳しく解説します。
2.生たまごが長持ちする、正しい保存方法とは
たまごの賞味期限が切れても慌てないためには、購入後、正しい方法で保存することが、一番のポイントです。
2-1.冷蔵一択!気配りプラスで保存力がさらにアップ
サルモネラ菌は、10℃以下の環境ではほとんど増殖しません。
家庭では冷蔵庫が最適な場所です。購入後は、すぐに冷蔵庫へ保存しましょう。その際に、以下のポイントをプラスすれば、より良い状態で保存ができますよ。
【冷蔵庫で保存力がアップするポイント】
◎ドアポケットよりも冷蔵庫の奥の方が良い(温度が安定しており、衝撃も少ないため)
◎たまごのとがったほうを下にする(殻の中の空気を卵黄から遠ざけるため)
◎使う直前まで冷蔵庫に保管し、頻繁に出し入れしない
最近は、たまご専用の保管庫がついている冷蔵庫もありますが、購入時のパックもたまごの保護力は抜群なので、パックのまま保管するのも理にかなっています。
2-2.たまごを良い状態で保存する際のNG行動は?
たまごを安全に保存するために、以下のような行動はおすすめしません。
【たまごを保存する際のNG行動】
×購入後、拭いたり洗ったりする(出荷前に殺菌洗浄されています)
×冷凍保存(殻が割れて衛生的ではありません)
×冷蔵庫の冷気の吹き出し口も注意(凍ってヒビが入るため)
3.賞味期限が切れたたまごの安全な食べ方
それでもうっかり賞味期限を切らせちゃった!そんな場合も、きちんと冷蔵保存していて、見た目やにおいに異常がなければ、大丈夫です。安全な食べ方について解説します。
3-1.賞味期限切れのたまごはサルモネラ菌に注意
たまごの劣化で気を付けるべきは、前述の通りサルモネラ菌です。
サルモネラ菌が増殖し、汚染されたたまごを食べた場合、8~72時間後に、腹痛・下痢・発熱・嘔吐などの食中毒を引き起こす可能性があります。
とは言え、日本では、たまごの中にサルモネラ菌が存在している頻度は0.003%と非常に少ないのが実情です。また、たとえ存在していても、適切な保存期間・保存状況であれば、その量は微細で、食べても健康に問題はありません。
3-2.たまごのサルモネラ菌対策は加熱が簡単で確実
サルモネラ菌は、70℃で1分の加熱をすることで、死滅させることができます。
賞味期限が切れたたまごは、サルモネラ菌増殖のリスクがゼロではないので、生焼けにならないようにしっかりと加熱して、調理後はすぐに食べましょう。
炒め物など、他の食材と一緒に加熱する場合は、75℃で1分加熱すると安心です。
調理中も、たまごに触ったら手を洗う、別の食材を調理する場合には、その都度、調理器具を洗浄することも、安全性を高めるポイントです。
3-3.賞味期限内でも気を付けたいケースは?
ヒビが入ったたまごは期限内であっても要注意です。見た目やにおいに異常がないことを確認し、すぐに加熱して食べることをおすすめします。
また、茹でたまごにすると賞味期限が伸びるイメージを持たれがちですが、これは間違いです。卵白に含まれる酵素・リゾチームは、加熱すると抗菌作用がなくなるので、温泉たまごや茹でたまごの賞味期限は、正しく保存されている生たまごよりも短くなります。
茹でたまごは、ヒビがないものは冷蔵庫保存で3~4日、半熟やヒビが入ったものは当日中に消費しましょう。
4.日本は、たまごを生で食べられる希少な国
「外国ではたまごを生で食べてはいけない」と聞いたことはありませんか?日本のように、たまごを生で食べられる国は、世界でもめずらしいんです! 私たちが安心してたまごかけご飯が食べられるのは、生産者や流通関係者の優れた衛生管理の賜物なのです。
4-1.生育から流通まで、細やかな管理で安全に届けられる
日本のたまごが生食できるのは、鶏の生育から採卵までの衛生管理がしっかりしているから。
養鶏場では、生育段階に応じて鶏舎が分けられていたり、採卵するたまごと、鶏・鶏糞が混ざらない仕組みが確立されていたり、とても衛生的です。
採卵後は翌日までに、地域に根ざしたGPセンターという施設に運ばれます。ここでも、HACCP(ハサップ、危害分析重要管理点)に基づいた細やかな衛生管理の下、洗浄・検卵・選別され、新鮮なうちに出荷されます。こうして、採卵からわずか2~3日で、生食できる安全なたまごが売り場に並ぶ仕組みが作られています。
5.賞味期限が切れても慌てないで
日本のたまごの賞味期限は、生食を前提に、余裕を持って設定しているため、賞味期限が切れたたまごでも、加熱すれば安心して食べられることがわかりましたね。また、その裏にある、鶏卵業者の優れた衛生管理技術も、心強いです。
賞味期限が切れていても、慌てて捨てずに食べ切ってくださいね。